電気錠選びの基礎知識動作原理による種類と特徴

電気錠と一口に言っても、その動作原理によっていくつかの種類に分類され、それぞれ特徴や適した用途が異なります。電気錠の導入を検討する際には、これらの違いを理解しておくことが重要です。代表的な電気錠の動作原理とその特徴について解説します。まず「電磁ロック式（マグネットロック）」です。これは、扉と枠に取り付けた電磁石と吸着板（ストライクプレート）が、通電時に強力な磁力で吸着することで施錠するタイプです。構造がシンプルで可動部が少ないため、故障しにくく耐久性が高いのがメリットです。また、施錠時にデッドボルト（かんぬき）の突出がないため、扉が閉まれば確実に施錠され、扉の歪みなどの影響を受けにくいという利点もあります。一方で、停電時には原則として解錠状態になる「フェイルセーフ」設計が基本のため、停電時のセキュリティ確保には別途対策が必要です。主に、通用口や非常口など、高いセキュリティレベルと同時に、緊急時の避難経路確保が求められる場所に用いられます。次に「モーター式」です。これは、認証後に小型モーターが駆動し、歯車などを介してデッドボルトを動かすことで施解錠するタイプです。施錠・解錠の動作が比較的静かでスムーズなのが特徴です。停電時にも施錠状態を維持する「フェイルセキュア」設計が可能な製品が多く、セキュリティを重視する玄関ドアや重要な部屋の扉に適しています。デッドボルトを物理的に動かすため、防犯性も高いと言えます。ただし、構造がやや複雑になるため、電磁ロック式に比べると価格が高くなる傾向があります。そして「ソレノイド式」です。ソレノイドとは、コイルに電流を流すことで内部の鉄心（プランジャー）を直線運動させる電磁部品のことで、この力を利用してデッドボルトを動かします。モーター式に比べて応答速度が速いという特徴がありますが、作動音がやや大きい場合があります。モーター式と同様に、フェイルセキュア設計が可能です。これらの主要な方式以外にも、ホテルでよく見られるカードロックシステムなども広義の電気錠に含まれます。それぞれの動作原理には一長一短があり、設置する場所の用途、求めるセキュリティレベル、予算、停電時の運用方針などを総合的に考慮して、最適なタイプの電気錠を選ぶことが重要です。