電気錠システムは、単にドアに取り付けられた錠前だけでなく、複数の機器が連携して機能する一つのシステムとして成り立っています。その仕組みを深く理解するためには、システム全体を構成する主要な機器とその役割を知ることが重要です。まず、システムの頭脳とも言えるのが「制御盤(制御部)」です。認証リーダーから送られてくる情報を処理し、登録されたデータと照合してアクセスの可否を判断します。そして、その判断結果に基づいて電気錠本体へ施錠または解錠の指示(電気信号)を送ります。入退室履歴の記録や、接続された複数の電気錠の一括管理、タイマー設定による自動施解錠など、高度な機能を持つ製品もあります。次に、利用者が直接操作するのが「認証リーダー(認証部)」です。カードリーダー、テンキーパッド、指紋認証センサー、スマートフォンアプリなどがこれにあたります。利用者の認証情報(カード情報、暗証番号、生体情報など)を読み取り、制御盤へ送信する役割を担います。設置場所の環境やセキュリティレベルに応じて、様々なタイプのリーダーが選択されます。そして、実際にドアの施解錠を行うのが「電気錠本体(錠前部)」です。制御盤からの信号を受けて、内蔵された電磁石やモーター、ソレノイドを作動させ、デッドボルト(かんぬき)を動かしたり、ドアを吸着させたりして物理的に施錠・解錠します。ドアの種類や材質、設置場所に合わせて、様々な形状や機能を持つ錠本体が存在します。錠本体と対になる形でドア枠に取り付けられ、デッドボルトを受け止めたり、電磁石の吸着相手となったりするのが「ストライク」です。電気錠システム全体に安定した電力を供給するのが「電源装置」です。電気錠は常に電力を必要とするため、専用の電源装置から配線を通じて各機器に電力が供給されます。停電時に備えて、バッテリーを内蔵した無停電電源装置(UPS)が組み込まれることもあります。利用者が室内から解錠操作を行うための「操作表示器(解錠ボタン)」も重要な構成要素です。通常、サムターン(室内側のつまみ)がない電気錠の場合、このボタンを押すことで解錠します。機種によっては、施錠・解錠の状態や異常を表示するランプが付いているものもあります。これらの機器が、それぞれ定められた役割を果たし、配線によって相互に接続されることで、電気錠システム全体がスムーズに機能するのです。
電気錠システムの全体像構成機器とその役割