株式会社テックイノベート(仮名)は、都内に本社を構えるITソリューション企業です。従業員数は約150名、機密性の高い顧客情報や開発中のソフトウェア情報を扱うため、オフィス全体のセキュリティレベルの維持・向上が常に経営課題となっていました。従来は、各従業員にICカードキーを配布し、主要なエリアへの入退室管理を行っていましたが、いくつかの問題点を抱えていました。まず、ICカードの紛失や盗難のリスクです。カードを紛失した場合、セキュリティ上の懸念から迅速な無効化処理と再発行が必要となり、管理部門の負担となっていました。また、従業員がカードを自宅に忘れたり、一時的に他人に貸与したりするケースも散見され、厳密な本人確認が徹底されていない状況がありました。さらに、部署間の異動や退職に伴うカード情報の更新・削除作業も煩雑でした。これらの課題を解決し、より高度で効率的な入退室管理システムを構築するため、同社は指紋認証キーシステムの導入を決定しました。導入にあたり、同社が重視したのは、高い認証精度とセキュリティレベル、管理の容易さ、そして既存の勤怠管理システムとの連携可能性でした。複数のベンダーの製品を比較検討した結果、生体検知機能付きの静電容量式センサーを採用し、指紋データの暗号化や不正アクセス防止機能が充実しているA社のシステムを選定しました。また、万が一の停電時にも動作するバッテリーバックアップ機能や、遠隔でのログ確認・管理が可能なソフトウェアも決め手となりました。導入対象エリアは、オフィス全体の入口、サーバールーム、役員室、そして特定のプロジェクトルームです。設置工事は、専門業者によって週末を利用して行われ、業務への影響を最小限に抑えました。工事完了後、全従業員を対象に指紋の登録作業が行われました。管理部門のスタッフが立ち会い、各従業員にシステムの概要と操作方法を説明しながら、左右の人差し指を中心に複数の指紋を登録しました。最初は「指紋を取られるのは少し抵抗がある」という声も一部ありましたが、データの安全性に関する説明や、導入による利便性向上への期待から、最終的には全従業員の協力が得られました。
オフィス導入事例指紋認証キーで変わる入退室
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