オートロック閉め出し体験談あの日の絶望

まさか自分が、と多くの人が思うだろう。私もそうだった。その日は、いつもより少し寝坊してしまい、慌てて家を飛び出した。ゴミ出しのために、ほんの数秒だけドアを開けたつもりだった。カチャン、という無機質な音とともにオートロックのドアが閉まった瞬間、血の気が引くのを感じた。手にはゴミ袋だけ。財布もスマホも、そして何より家の鍵も、部屋の中に置いたままだった。最初は楽観的に考えていた。すぐに家族が帰ってくるだろう、と。しかし、時計の針が進むにつれて、その期待は不安へと変わっていった。家族は皆、今日は帰りが遅い予定だったのだ。マンションのエントランスホールは、静かで、冷たく、私の焦りを増幅させるようだった。管理人室は閉まっている時間帯。誰かに助けを求めることもできず、ただ立ち尽くすしかなかった。時間が経つにつれ、寒さと心細さが身に染みてくる。なぜ鍵を持たずに出てしまったのか、後悔の念が押し寄せる。オートロックは防犯上、非常に優れたシステムだ。しかし、一度締め出されると、その堅牢さが仇となる。住民以外を容易に入れない仕組みが、自分自身をも締め出す壁となるのだ。しばらくして、同じマンションの住民が帰宅した。事情を話し、エントランスの中に入れてもらったものの、自分の部屋のドアの前で再び立ち往生することになった。結局、家族に連絡を取る手段もなく、ひたすら待ち続けるしかなかった。数時間後、ようやく帰宅した家族に呆れられながらドアを開けてもらった時の安堵感は、今でも忘れられない。この経験を通じて、オートロックの便利さの裏にあるリスクを痛感した。ほんの少しの油断が、大きなトラブルにつながる。それ以来、外出時は必ず鍵を持ったか指差し確認をするようになった。ゴミ出しのような短時間であっても、鍵を携帯する習慣を徹底している。この苦い経験は、オートロックと付き合っていく上での大きな教訓となった。


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